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北極星を与えられたドルヴァ 

ドルヴァ

  ウッターナパーダ大王にはスルチとスニーティという二人の王妃がいました。大王の寵愛が深いスルチは、ある時、スニーティの子供のドルヴァが大王の膝に乗ろうとしたのを見咎めドルヴァを叱り付けました。「下がりなさい。私の子でないお前にその資格はない」と。泣きじゃくって帰ってきた息子の話を聞いた賢母のスニーティはドルヴァに言い聞かせました。「王に顧みられないこの母を許しておくれ。すべては故あってのこと、誰をも恨んではなりません。主ヴィシュヌを想うなら、必ずやお前の苦しみを除いてくださるでしょう」と。

ドルヴァの前に現れたクリシュナ.jpg

 ドルヴァは、素直にその教えを守り、ブリンダーヴァンの森で1日、2日、3日,ひと月、二月、三月とひたむきに主を瞑想しつづけ半年がたった時、その眼前にヴィシュヌが立たれました。その神々しい姿を見て、喜びに打ち震える彼に主は北極星の守護者という高い地位を与えられました。

 ドルヴァは五歳にして意を決し、城を出るとクリシュナ(ヴィシュヌ)の聖地へと向かいました。道すがら、彼を不憫に思った天界の大導師ナーラダが現れ彼を諭しました。「まだ年端もいかぬ身で、そのような悔しい思いを抱くとは、まさに無知の証拠である。お前に主クリシュナの秘奥のマントラを授けてあげよう。心を込めて唱え、ひたすらクリシュナ(ヴァースデーヴァ)の蓮華のみ足を瞑想するように」と。

ヴィシュヌの恩寵をいただくドルヴァ」

​オーム ナモー バガヴァティ ヴァースデーヴァー ヤ (神聖なるヴァースデーヴァに帰依したてまつる。(ヴァースデーヴァ=クリシュナ=ヴィシュヌ)

 主の御名の偉大さを伝えるお話です。更には信仰には幼子のような素直さ、純粋さが必要ということを意味しているのでしょうか?

ヴィーラブラフマンドラ スワミの預言(インドのノストラダムス?)

ヴィーラブラフマンドラ
カラガラナム

 ヴィーラブラフマンドラ・スワミは10世紀ごろのインドの聖者です。彼は万物はすべて神の現れであると説き、 宗教に差を認めず不可触賤民(アウトカースト)やイスラム教徒も分け隔てなく接しました。何ものをも恐れることなく真理を説く彼に激昂するバラモン僧たちも、彼の威厳と霊力の前に改心してひざまずきました。様々な奇跡の話は語りつくせません。なお、彼がヤシの葉に書いた予言書カラガラナム(「主ゴヴィンダの言葉」)の多くが実現していると言われています。彼の預言のいくつかを抜粋します。

♦北インドの商人階級からガンジーと呼ばれる人が生まれる。彼は独立運動を行い、非暴力的な政策で、白人を私たちの国から遠ざけるだろう。
♦生きていない車両が現れる。(動物を利用しない車。自動車、電車など?)
♦世界全体でランプは水で照らされる。(電気?電気はタービンを水蒸気で回して作るため)
♦悟ったグル(宗教指導者)は稀になり、詐欺的なグルが無数に現れる。
♦君主制は、市民が支配する新しいシステムに置き換わり市民が指導者になる。
♦画面上の画像が国を支配する。(テレビによる人心操作それとも芸能人の政界進出?)
♦すべてのものが偽装される。
♦人々は多くの薬を飲み、その副作用で苦しむ。
♦女性が男より強くなり、社会のすべての分野を支配する。

♦善悪を考えず富のために兄弟姉妹が殺しあう。
♦高位カーストは名声を失う。

♦ライオンなどの野生動物は森林破壊、他国への輸出、殺害等により絶滅する。

♦海は上昇し、その中の都市を飲み込む。

ヴィーラブラフマンドラスワミ

♦有毒ガスが東に現れ多くの人が死ぬ。コランキ病(Coranki)は1千万の人々を襲う。彼らは鶏のように落ちて死ぬ。(武漢はインドの東。Corankiはコロナ?。また5Gのアンテナのそばで鳥が落ちています。)

最後に彼の言葉から:
「常にこの世の物質的なことを考えて人生を送るならば、あなたはいつも泣くことになるだろう。しかし常に神を想い、祈り、心を込めて至上主を瞑想して生きるならば、健康、富、名声などあらゆるものが与えられるだろう。」

 彼はヴィシュヌ神の化身の一人と言われています。ノストラダムスの予言書より、かなりレベルが高いような気がします。

​テルグ映画のベスト100に入ると言われる1984年の名作です。

​スリ・ラーガヴェンドラ

スリ ラーガヴェンドラ

 スリ・ラーガヴェンドラ・スワミ(1595-1671)は南インドの高名な聖者でヴィーナ(琵琶)の名手です。クリシュナを愛する幼い彼の前に子供の姿のクリシュナが現れて、彼の手ずから果物を受け取り食べたと伝えられています。成長してからは妻帯して村の子供たちにヴェーダを教えて生計を立てていましたが、金銭に関心が薄く生活は楽ではありませんでした。

 その後、サラスバティ(学問の女神)の幻を見て、彼は出家を決意します。師の跡を引き継ぎ僧院の長になった彼は巡礼の旅に出ました。その時、多くの奇蹟をあらわしました。

①彼が祭儀に出席していた時、台所で子供が大きなスープのツボにはまって死んでしまいました。運び込まれた死体に彼が聖水を振りかけると生き返りました。

②ある王が彼の正体を暴いてやろうと皿に肉(不浄とされる)を盛り、外から見えないように布を被せて、うやうやしく彼に差し出しました。彼は平然として聖水を振りかけ、布を取った時、皿の中は新鮮な果物で一杯になっていました。

③彼に帰依する或る王が彼に高価なネックレスを捧げました。彼はクリシュナの名を唱えて、それを燃える聖火の中に投じました。王が憤りネックレスを返すように迫ると彼は素手を火の中に入れて取り出しました。王は彼の前にひれ伏しました。

試されるラーガヴェンドラ

​王がラーガヴェンドラを試す

ラーガヴェンドラ スワミ

  彼は晩年、まもなく寿命が尽きることを知ると数百人の信者の前で最後の説法をした後、禅定に入りました。師がサマージ(三昧)に入り指の動きが止まった時、弟子たちが数多くの分厚い板で周りを囲い棺桶にし、その中に1200個の神石を入れた後、蓋を被せて花で美しく飾りました。現在、その棺を包みこむように、寺院が建ち、多くの参詣者で賑わっています。彼はプラフラーダ(悪魔ヒラニヤカシプの子でヴィシュヌの熱烈な信仰者)の化身と言われています。

ヴィーナを聴く主クリシュナ
ラーガヴェンドラ スワミの棺

ラーガヴェンドラの棺

【最後の説法より】
🔹正しい生活とは人生のそれぞれの時期に定められた義務を果たすことです。行為の結果を期待せずにすべての行為を主に捧げなさい。
🔹人々のために行う社会的義務は主への礼拝と考えられます。生活そのものが主への礼拝です。
🔹正しい知識は奇跡に勝ります。奇蹟は神の偉大さを知らしめるためのものです。正しい知識無しに本当の奇蹟は起こりません。
🔹主に対する信愛を持ちなさい。しかし盲目的な信仰であってはなりません。

​シルディ村のサイババ 

シルディ村のサイババ

 シルディ・サイババはインドの田舎で乞食(こつじき)と托鉢の生活(ファキール)をしていました。素朴で、無一文で、誰をも差別せず、どこにでもいる貧民のようでいて、その驚くべき奇跡の数々から聖者と仰がれています。イスラム教もヒンズー教もキリスト教も同じ神の教えとして差別しませんでした。彼の生まれたシルディ村はインド人の著名な巡礼の地の一つです。彼の逸話を少し紹介します。

板の上に寝るババ

●野原で蛇がカエルを飲み込もうとしていました。サイババはその蛇に人間の名前で呼びかけて叱ると蛇は飲むのをやめて去ってゆきました。サイババは周りの人に、この蛇とカエルが共に前世は人間であって、殺したり殺されたりしていた因縁譚を詳しく語りました。

●サイババは信者からもらった板を天井からぶら下げて、1.8mほどの高さにし、その上で寝ていました。細い紐が切れなかったのも不思議ですが、誰も彼がそこに上がるところと降りるところを見たことがありません。
●彼が口から腸を吐き出して、水で丸洗いし、木の枝にかけて乾かしているのを多くの村人が見ました。
●ババが有名になってから多額の寄付が集まりましたが、ババはそれを蓄えず、豪華な贈り物は贈りぬしに返しました。薪とオイルとタバコを買うわずかな分を残して、残りすべてをその日のうちに困っている人達に分け与えました。

● 主クリシュナの熱烈な信者のある女性がサイババの家にやってきました。彼の姿を見てイスラムの人と思って帰ろうとしたら、サイババが「待ちなさい」と呼びました。振り返って彼を見た時、彼の胸にクリシュナの姿が見えました。
● ある人が「私は罪深い人間です。何も良いことをしてきませんでした」とサイババの前で懺悔しました。すると彼は言いました。「どうしてだ。お前はわしに食べ物をくれたではないか」と。「いえ、そんなことはありません。」「お前は、この前、腹をすかした犬に餌をやらなかったかい。あれはわしだったのじゃよ。」

犬に餌をやるサイババ

【ババの言葉】
🔹あなたが裕福ならば謙虚になりなさい。植物は実ると頭が垂れるものだ。
🔹自分と他人の間にある壁を破壊しなさい。
🔹私は誰にも腹をたてない。海は川の水を送り返すだろうか?
🔹人間として生まれるのは功徳を積んだからだ。今、どうして人を中傷するのか。
🔹他人の行為は彼だけに影響する。あなたに影響を与えるのはあなた自身の行為だ。
🔹私のところに来る人は多いが、そこから宝を持ち出す人は少ない。
🔹内側の目で見るならば、あなたは神であり、神と異ならないことに気づくだろう。
🔹私は肉体から離れた後も、活発で精力的に働く。
🔹重荷を私に委ねなさい。そうすれば私がそれを担おう。
🔹神を賛美しなさい。私は神の下僕にすぎない。

宗教​改革者カビール

宗教改革者カビール

  カビールは15世紀のインドの詩人であり聖人です。ヒンズー教徒の捨て子として拾われた彼はイスラム教徒の機織り職人に育てられました。詳しい伝記は残っていませんが、クリシュナを信奉するヒンズー教の聖者ラーマナンダに弟子入りして信仰を深めていったと言われています。彼にはイスラム教、ヒンズー教の多くの弟子がいました。彼の精神は後にナーナク(シーク教の始祖)に大きな影響を与えることとなります。

ガンジス川で拾われるカビール
​ガンジス河で拾われるカビール
ラーマナンダの祝福を受けるカビール.jpg
ラーマナンダの祝福を受けるカビール

 彼が亡くなった時、その体をどうするのかでイスラム教とヒンズー教の弟子の間で口論がおきました。その時、突然カビールの幻が現れて、私の体を二つに分け、一つはイスラム式の土葬にし、もう半分をヒンズー教式の火葬にしたらよかろうと言うと消えてしまいました。そこで弟子たちが遺体にかけられた覆いを取り除くと、そこには美しい花束があるだけでした。(彼の考えを端的に示している詩がありましたので以下、引用させていただきます)

「私はヒンドゥーかと尋ねれば
違うと言おう
イスラームか? それも違う
どちらも真理を隠している
私はどちらにも遊ぶ

 お前はどこから来た?
そしてどこに行くのか?
お前自身の身体に聞け
本当の師を見つければ
秘密を知る事ができる
内側の窓が開くだろう」

かびーる
カビールと信者.jpg

「もし裸で歩き回ることで
神との合一が得られるなら、
森の中のあらゆる鹿は救われるだろう。
裸で歩こうが鹿の皮をまとおうが、
心の中で神を認めないのなら、
何の違いがあろう。
夜も朝も沐浴する者たちは、
水の中の蛙のようなもの。
神の御名への愛がなければ、
皆 死神のもとへ行く。
カビールは言う、
なぜそんなに多くの儀式を行うのか。
他のあらゆる本質を捨て去り、
神の御名という、
かの偉大な本質を飲み干せ。」

カビール切手.jpg
カビールの切手
カビール切手2

​シーク教の開祖 グル・ナーナク 

シーク教の始祖ナーナク

 世界には2千4百万人のシーク教の信徒がいますがインドでは少数です。髪の毛は神聖なものとして一生切らずにターバンで巻いています。ヒゲも剃らずに伸ばしていますのでわかりやすいです。開祖とされるグル・ナーナク(1469-1539)は宇宙の一なる神と万物の一体性(ワンネス)を悟り、輪廻転生から抜け出すため敬虔で利他的な生活をするよう説きました。

コブラがナーナクのために覆いとなる

子供の時、寝込んだナーナクのため日陰をつくるコブラ。村人の噂となる

 ナーナクはいつも二人の弟子(イスラム教徒とヒンズー教徒)を連れて村々を回っていました。ナーナクの逸話を一つ紹介しましょう。

 ある村の二人の男(AとB)がナーナクに会い行く途中、若い女性に一緒に遊ぼうと誘われました。Aはとりあいませんでしたが、Bは誘惑に負け、飲み屋で酒をあおり賭博に負けて、妻が手渡してくれた布施にまで手を付けてしまいました。

 そうした日が数日続き、BがAに言いました。「数日たったけど、君も僕も何も変わらない気がする。君もわざわざ話を聞きに行く必要はないんじゃないか。」「いいや、僕はそうは思わないよ。じゃあ、明日、あそこの木のところで、また君と会おう。神様はきっと教えてくださるに違いない」。

村々を回るナーナク

 翌日、Bが木の根元で友人を待っていたとき、足もとに何か光るものが見えます。金貨でした。喜んだ男はさらに掘りましたが出てきたのは炭の塊ばかりでした。そこにAがびっこを引いて現れました。「足に棘が刺さってしまったんだ。」

 二人は一体どういうことなのかナーナクのもとに聞きに行きました。

二人の男

  ナーナクがAに言いました。「お前は前世で泥棒だった。多くの罪を積んでいたため鋭い刃に貫かれて死ぬ運命だった。足に棘が刺さった程度ですんだのは信仰の功徳なのじゃ。」次にBに言いました。「お前は前世で困った聖者に1枚の金貨を与えたことがあった。本来ならその功徳で数百枚にもなって返ってくるはずだったのじゃが、悪行のせいで、1枚だけが戻ってきたのじゃよ。」二人は深く納得し、彼に帰依するのでした。

ゴールデンテンプル

シーク教の本山の黄金寺院

 ナーナクは多くの聖歌を歌いました。悟った時に歌った歌はムル・マントラと呼ばれ、シーク教の基礎となっています。
【意訳】神とその創造物は一つです。真理が私たちの本性です。神は一切の行為者であり、恐れも憎しみもない不生不滅の光(実在)です。私たちには誠実な行為と瞑想、ジャパ(神の名を繰り返し唱えること)が必要です。原初から存在する真理は、時代を経ても変わらず、今の瞬間も存在しています。その永遠の真理を神(グル)の恩寵によりナーナクは悟りました。

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ゴールデンテンプル

黄金寺院では1日に10万食もの食事を参拝者に無償で供しています。

チトラケートゥ王の昇天

チトラケートゥ王の昇天

 チトラケートゥ王はクリシュナ神の帰依者で慈しみ深く、知識に秀でた人物で広大な国土と豊かな富、千人の美しい王妃たちに取り囲まれて幸せな日々を送っていました。ある日のこと、聖者アンギラスが王宮を訪れますと王の顔色が冴えません。どうされたのですかと問われて「あなた様に隠し立てはできませんので告白しますが、私の子供たちは全て女性で跡継ぎがいないのです。どうか私に跡取りをお与えください」。アンギラスはある儀式を行った後、「あなたは息子を授かります。しかしそれによって喜びと悲しみを得ることになるでしょう」と言い残すと去ってゆきました。

 やがて王妃の一人に息子が生まれ国は活気づき、お祝いの日々が続きました。王の喜びこの上もありません。しかし、そうして王の寵愛が一人の女性のみに移ったことで多くの王妃たちは嫉妬と怒りに心を燃やすこととなりました。そして遂に共謀して王子に毒を盛って殺してしまいました。

悲嘆にくれるチトラケートゥ王

子供の魂を呼び出したナーラダ仙

 悲しみの涙にくれる王の前に再び聖者アンギラスがナーラダ仙を伴い現れました。「何を取り乱されているのですか、道理を知るあなたがそのような愚かな姿を見せるものではありません。人は縁あって親になり子になり、また敵になり様々な縁を作りますが、すべては移ろいゆくものです。ただ至上主のみが変わらぬのです」アンギラスは諄々と王に説くのでした。

 さらにナーラダ仙は、子供の魂を呼び出し、この世に戻るよう説得しますが、私はその気はありませんと言って消えてしまいました。王は落ち着きを取り戻し、正気に目覚めました。

天界の大導師ナーラダ仙

​天界の大導師ナーラダ仙

「儚い幸せではなく本当の幸せはどうすれば得られるのでしょうか。」王の問いに、アンギラスはにっこりとほほ笑むと、これから1週間の間、主クリシュナをひたすら想い、念じなさいと言って、主を賛美する歌とマントラを与えると帰って行きました。

  王は息子の葬儀を済ませると王宮を出て、ひたすら主を想う生活を続け1週間が経った時、主サンカルシャナ(主クリシュナの拡張体。クリシュナの兄バララーマ)にまみえることができ、彼は随喜の涙を流すのでした。

 主の恩寵により昇天した王は、ある日、多くの聖者の前で妻を抱くシバ神を見て、恥を知りなさいと叱責しました。それをシバ神への侮辱ととらえた妃パールバティが呪いを発します。「シバ神を敬わず傲慢なお前は悪魔に生まれるがよい」。彼にはその呪いを解く力が有りましたが、善悪に超然とし、すべては主の思し召しと、その呪いを静かに受け入れ、悪魔ブリトラとして生まれることとなります。その結果、インドラ神と激しい戦いの後に命を落としますが、主を念じつつ戦ったブリトラは、死と同時に昇天するのでした。

サンカルシャナを仰ぐチトラケートウ

​主サンカルシャナを礼拝するチトラケートゥ

注:物質的思考は主のマーヤー(無いものを有ると思わせる幻術)によるものです。チトラケートゥ王のように主を庇護所として至上主に心身を捧げたとき、その恵みによって迷妄の世界から抜け出すことができるというお話です。また不幸と思える出来事が真の幸福につながることが有るということを示唆しています。

骨を差し出した聖者ダディーチ

骨を差し出した聖者ダディーチ

 悪魔ブリトラが猛威をふるい天上界、地上界が闇に覆われたとき、インドラ神は助けを求めて、ビシュヌ神のもとに駆け込みました。ヴィシュヌ神は「聖者ダディーチの骨でヴァジラ(雷電)を作りなさい。それに私が威力を添えるゆえ、必ずやブリトラを打ち負かすことができよう」と秘策を授けました。

ダディーチ

​ダディーチに骨を乞うインドラ

 早速インドラはダディーチを訪れ、あなたの骨が欲しいと単刀直入に申し出ました。随分あつかましい話です。

 しかし聖者ダディーチは、それが主のご意思ならばと、こころよく承諾すると、たちまちにして肉体を脱ぐのでした。(ヨガの神秘力で魂を肉体から切り離し、あの世に帰ること。)

 その骨を天上界の工芸師 ヴィシュワカルマンが刻んでヴァジラが完成しました。インドラはそれを携えブリトラとの戦いに臨むことになります。

激しい戦いの後、ブリトラが率いる悪魔軍が劣勢になって総崩れになっても、ブリトラは決して敵に背を向けることなく、ただただ主サンカルシャナを念じて戦いました。

ブリトラ悪魔

​ブリトラとインドラの戦い

 勝ち負けは時の運、否、主の御心によるものと受け止めるブリトラは、この戦いで自分が命を落とすことがわかっていました。

 それにも関わらず、正々堂々と戦い両腕を切り落とされながらも、インドラを大きな口で飲み込んで勝ったかに見えましたが、主に守られたインドラは、ブリトラの体をヴァジラで切り裂いて出てくると、忽ちその首を刎ね落としてしまいました。

 神々はブリトラの肉体から光り輝く魂が飛び出し至上主の体の中に融合するのを目撃しました。彼は再び最高の世界へ戻ったのです。

注:ダディーチも悪魔ブリトラも、なかなか到達しがたい最高の世界(クリシュナの国)へ帰ることができました。至上主への絶対の信が求められる所以です。

​三つの目と四本の腕を持って生まれてきた男

四本の腕を持って生まれた男

 シシュパーラはクリシュナの父(ヴァステーヴァ)の妹の子です。三つの目と四本の手を持って生まれてきたため、気味悪がられて殺されそうになります。その時、天から声が聞こえてきました。「今はその時ではない。この子は強大な王になるが、ある方によって殺されることになる。そのお方がこの子を膝に乗せたとき、余分な腕と目は消えうせるであろう」と。

シシュパーラを抱くクリシュナ

 多くの人が、もの珍しさにこの子を見に来て、膝に乗せるのですが何の変化もありませんでした。ある日、クリシュナがやってきて、この子をあやして膝に乗せると普通の子供の姿に変わってしまいました。

 それを見た彼の母親は大いに驚き、クリシュナにどうかこの子を殺さないでほしいと嘆願しました。クリシュナは「おばさま、では、この子が罪を100回犯すまでは殺さないようにしましょう」と約束するのでした。シシュパーラは大きくなって様々な悪事を行いましたがクリシュナは黙って見ておられました。

 さてパンドゥの長男ユディシュティラが大々的な即位式を執り行った時、ブラフマー神、シヴァ神、インドラ神のほか数多くの聖者、王様などが招かれました。そのおり最初に崇拝される最も尊い人にクリシュナが選ばれました。すべての人が同意する中、ただ一人、異議を唱えた男がいました。シシュパーラです。彼は結婚式の当日、妻となるはずのルクミニーをクリシュナに奪われたので非常に恨んでいたのです。「多くの聖者様方をさしおいて、どうして羊飼い育ちのクリシュナなのだ」とクリシュナの悪口雑言をまくしたて武力を用いてでも阻止しようとしました。静かに聞いていたクリシュナでしたが、誹謗中傷によって彼の罪が101回となった瞬間、スダルシャナチャクラを投げて一瞬のうちに首を刎ねてしまいました。シシュパーラが倒れた時、一筋の光が主クリシュナの中に吸い込まれていきました。

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クリシュナに首を刎ねられるシシュパーラ

 シシュパーラはいつも、いつもクリシュナ憎しと恨み続けていました。主は善悪を超えた方なので、いつも主を想うならば、たとえそれが憎しみであっても救われると言われています。(註:主クリシュナを想い続けることの大切さを強調したお話で、決して悪い思いをもっても良いという意味ではありません)

追伸:シシュパーラはかつて神の国(ヴァイクンタ)の門番だったと言われています。聖者の呪いを受けて地上に落ちてしまいましたが、生まれたときにビシュヌ神の様な姿をしていたのも、うなずける話です。

スダルシャナ・チャクラ、ほら貝、蓮の花、こん棒を持つヴィシュヌ神

ヴィシュヌの持ち物
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